もともと、このコアのプログラム構成は人間としての基本概念と、あらゆる状況下におけるもっとも合理的な戦闘遂行能力。そして敵とみなす物を徹底的に破壊殲滅することに由来する存在価値に拠っている。
人間としての基本概念の根幹としてインストールされているのは、14歳の少女が持つ純粋さと同時に闘争心。不思議に思われるかもしれないが、スポーツなどのシーンを思い起してほしい、肉体的に未成熟ではあるが、それ故に計り知れない可能性を秘め大記録などを達成してしまう能力。一方向、あるいは一点のみに全力で集中傾倒できるのはこの位の年齢ではないだろうか?
プログラムとしてはそうした純粋な闘争心のみが必要で、機械的に見れば不要と思われる人間的な部分、例えば恐怖、迷いなどは全てカットして構成されている。しかしこの物語のコアのみに関してはそのカットされるべき人間性の一部分が、個性のひとつとしてインプットされた為、しだいに他のコアとは違った行動を取るようになるのである。

このコアに宿る肉体を持たない14歳の少女は、時々夢を見る、機械であるはずの脳(メインコンピューター)が現実とは違う自分という個体を想像しそれが歩きまわる姿を、長く続く無意味な戦争で荒れ果てた地表ではなく透き通った蒼い草原、柔らかな光と風に包まれながらゆっくり前に進む姿を。コアにインストールされた人間性の中に極僅かではあるが、14歳の肉体の記憶が紛れ込んで、戦闘を続け、その戦闘を自己評価して再プログラミングし終えた後の短い時間にこの夢は始まる。戦闘行為と相反する夢。やがてそれは戦闘のたびに再プログラミングの間に記憶として戦闘状況とセットでどんどん残って行くことになる。機械的に見ればいつかはそれが元でメモリの中で整合性が取れず、戦闘に対して正常な判断行動が出来ない状況を引き起こしてしまう、いわばバグの自己生成が始まっているのである。

最初の内は、ささいな行動違反で、単純に他のモビルスーツと連携行動を取らなかったり、先行して攻撃を開始してしまうなどであったが、その行動の一つ一つが戦闘自体を勝利に導く事になって、問題にはならなかったが、しだいに行動はエスカレートし自身のシェルであるモビルスーツに大きなダメージを与えてしまう戦闘行為を繰り返し、機能停止寸前まで酷使してしまうようになる。しかしそれは同時に味方に大きな戦闘勝利を導く事であり。この時点でこのコアの戦闘能力は並外れたものとなっており、マザーAIも更新をかけるよりは、この能力がさらに進化するのかさもなくば破滅するのかを見極める為、現状維持を決定する。
ちなみにこのモビルスーツ自体はこの時点で戦闘が長引き補給もなかったことから他のコアが使用しているものとほとんど差は無く、戦闘によるダメージ修復のみで特別装備などは、一切無い。唯一の違いは、単純にコアの持つ戦闘能力のみである、このムービーもその高い戦闘能力の記録で、そして何故、蒼い草原の夢は戦闘能力を引き上げるのか?その結果報告でもある。

Story#4 ”戦闘の現状”に続く